skillkills / Powwow(Music Video)
www.youtube.com/watch?v=H3lC-UbB0vQ
Artist: skillkills
Title: The Shape of Dope to Come
Catalog: BSWT0029
Format: CD
Track List
1. Here We Dope
2. Powwow
3. Lonely Man (skit)
4. The Shape of Dope to Come feat.向井秀徳、K-BOMB
5. Wishy-Washy
6. Mush (skit)
7. I'm Come In
8. Peace (skit)
9. Tres Bien Bohemian
10. Never Ending Nice Night
artwork : KILLER-BONG
mastering : Fumitake Tamura(BUN)
time:28:32
音楽界に衝撃を与えた1st、2stより4年、すでに4枚のアルバムを発表し完全に独自の世界を作り上げたskillkills。バンド初の客演に向井秀徳、K-BOMBを迎えた待望の5thアルバムをBLACKSMOKER より再びブロー!
『The Shape of Dope to Come』は、skillkills通算5枚目のアルバムとなる。前作『Ill Connection』が2015年1月のリリースだったので、ちょうど2年ぶり。ファーストから4枚目までは1年に1枚のペースだったことを考えると、単純に倍の時間がかかったのかと受けとられそうだが、とんでもない。むしろ、その間に彼らの活動はより濃密で多彩に展開していた。ここでは、本作に至るまでの流れを大まかに記しておこう。
まずは、2015年4月から配信されたアニメ作品『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』第12話に、エンディングテーマとして書き下ろしの新曲”Neo Cyber Madness”を提供。これを収録したサントラ盤『ニンジャスレイヤー フロムコンピレイシヨン「忍」』も7月に発売された。アニメの面白さに加えて、サントラに参加した豪華ラインナップも話題となったが、skillkillsもそんな盛り上がりに引っ張られてか、株式会社おくりバントの協力のもと、メンバー自身が忍者に扮して登場する傑作ビデオクリップを制作している。
そして、その”Neo Cyber Madness”を含む4曲入りEP『Dope This Way』を、2015年11月25日にリリース。この作品は、インストゥルメンタル・ヴァージョンを収録したCDに加え、ジャケットが複数の種類で用意され、個別に購入して好きな組み合わせでアートワークを組み立てられるという「トッピング方式」によって販売された。
今から考えれば、『Ill Connection』発表直後に突如3人編成になったことや、アニメとのコラボレーションという機会に触発された経験などが、『Dope This Way』の背景にはあるのかもしれない。それまでは自身から発する「進化への希求」をエネルギー源にして突っ走ってきたskillkillsが、この段階で外部的な要因から影響を受ける形での変化という局面を迎えたことは、なかなか興味深いところだ。
メンバー個々の活動についても簡単に書いておきたい。異次元的なビートを生み出すエンジンとなるドラマーのリズムキルスは、ビートさとし名義でソロ活動を本格的に開始。2016年5月には、シングル『BUZZ』を発表し、ヒカルレンズが姿を見せるビデオクリップも公開した。最近は個人でのライヴも積極的に行なっており、そのほかにも、マイクロコズムの太田美音が結成したayutthayaをはじめ、幾つかのプロジェクトにも参加している。
一方スグルスキルも、おなじみGuruConnect名義の活動を継続。『Ill Connection』発売を挟んで敢行されたソロ作品の怒涛の連続リリースも未だ記憶に新しいが、最近では、skillkillsの過去のアルバムを解体再構築したセルフリミックス作品『S.B.I.I.D』をカセット・リリースしたばかり。また、olololopの『PYRAMID』という作品でミックスを担当したり、さらには、ケンタッキーフライドチキンやニンテンドーのCMへの楽曲提供など様々な場で才能を発揮中だ。
なお、『Ill Connection』/『Dope This Way』/『BUZZ』/『S.B.I.I.D』、そしてolololop『PYRAMID』は、自分たちのレーベルであるILLGENIC RECORDSからのリリース。今作『The Shape of Dope to Come』は、ひさびさに古巣のBLACK SMOKER RECORDSからの発売となった。
そして、こういった創作活動の間にも当然のように、彼らの主戦場と言えるライヴも数多く行なわれてきたことは言うまでもない。2016年1月28日の新代田FEVERでのフリー・ワンマンや、ホームグラウンドである吉祥寺WARPで開催されるVANISHING JOINTというイベントなど、彼ら自身が主体となった印象深い企画はもちろんのこと、様々な場に呼ばれて強力な対バンとぶつかりあう少々アウェイなステージでも、やはり生演奏はskillkillsの真骨頂。いつだってインパクト満点のパフォーマンスでオーディエンスの目と心を惹きつけていた。
共演バンドは、とてもここで全てあげられないが、ZAZEN BOYS、是巨人、TRANSPARENTZなど、いずれ劣らぬ強者&曲者&巧者ばかり。以前からつきあいの深いバンドだけでなく、新たな交流を通じて得た刺激が、いっそうskillkillsを活性化させていったことは想像に難くない。
ちなみに、THA BLUE HERBのBOSS THE MCは、2016年10月のライヴについて、ウェブ日記で以下のように記している。
「舞台はヘビーシックゼロ。対バンはこちらも久々のskillkills。前に下北沢で一緒になって、こんな奴等がいるんだって驚いたし嬉しかった。再び相見える夜、しかも中野、前売りも完売。昂ってたよ。先攻はskillkills。相変わらずぶっ飛びと緻密さが同居したライブ。世界でも奴等だけじゃない? 超オリジナル。未見の人は絶対観た方が良いよ」
ついでにもうひとつ印象深かったのは、LITEの企画で行なわれたSpectrum vol.8出演時のこと。この日はTTNG、Myletsという海外アクトも参加していたのだが、Myletsのヘンリーは、skillkillsについて「俺が今まで見た中で最高のライヴだ!」と大絶賛のMC。続いてTTNGも「彼らにはブッ飛ばされた! アメイジング!」と話していた。こういった場面は過去ごまんと観てきているので、よくあるリップサーヴィスと、そうでない本気のコメントはすぐに見分けがつく。今回のは間違いなくガチだった。かねてから、skillkillsの凄さを世界へ知らしめたいと想い募らせているわけだが、この日は「ほら、直に見てもらいさえすれば一発だ!」と胸のすくような気持ちになった。
さて、ニュー・アルバム『The Shape of Dope to Come』についてだが、あまり余計なことを書き散らす気持ちはない。とにかく聴いてもらえば間違いないはずだ。
タイトルは、オーネット・コールマンのマスターピース『The Shape of Jazz to Come』へのオマージュだろうが、まさにバンドにとっても、シーンにとっても「来たるべきもの」を示す、彼らのキャリアの中でも決定盤と呼ぶべき1枚になったと思う。収録トラックのうち何曲かは、事前にライヴで何度か耳にして大きな手応えを感じていたが、スタジオ・ヴァージョンもバッチリ仕上がっている。
マナブスギルのリリックは、『Ill Connection』ではどこか自己の心情の吐露みたいな空気(?)を漂わせはじめていたが、いったん忍者というモチーフが入った経験を踏まえてか、独自のセンスによる言葉遊びを土台に、私的なフィールドへ着地しすぎることなく、いきなりチキンナゲットをちぎっては投げたり、食欲に続いては性欲をほとばしらせたりと、いっそう想定外のレベルで激しく言葉を攪拌してみせる。
スグルスキルのベースとリズムキルスのドラムから叩き出される、唯一無二のグルーヴとビートが、いつものようにフリーキーながらも、どこかキャッチーさが増しているのも面白い。
2016年にはプリンスが急逝したのをはじめ、音楽界は(社会全体も)まさに激動の時代という感じだった。その最後に、こういう重要作品を耳にできたのには本当に大きな意義を感じるし、実際にリリースされる2017年以降も、ますます予測不能の方向へ加速するskillkillsを追い続ける楽しみが確定したことは、我が音楽人生における至上の喜びだ。(鈴木喜之)
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